コッコレかないわ
金沢の港町である金石にオープンした「まちの複合施設」です。
金沢は城下町として知られますが、日本海に面した代表的な港町でもあります。しかし、金沢のベイエリアには人の集まる場所が乏しく、観光客はおろか市民すらも足を運ぶ機会はまれです。また、周辺地域の人口は若い世代を中心に減少の一途をたどり、まちの活気は少しずつ失われています。そのような金沢の海際のまち金石において、地域の未来をつくる、その拠点となるような施設、つまりは多くの人の集う場所を創出することを目的として、この複合商業施設は計画されました。観光地として賑わう市の中心部で感じられる「らしい金沢」に加え、ここではエッジとしての港町であるからこそ、そこにある日常風景の中に「リアルな金沢」を感じてもらえる場所づくりを目指しました。
小さな「丘」を囲むように3つの箱型の建物が立ち並び、「丘」の中はドーム状の空間となって、それぞれの建物と内部でつながり、飲食店・物販店・オフィスとして使われています。一方、「丘」の上にはテラスも併設された公園のような屋外空間が広がり、大きな空の下、近くの金石港や遠くの白山連峰を眺め渡すことができます。「たべる・つくる・はたらく・えらぶ・あそぶ・まなぶ」などのさまざまなアクティビティが同時に発生する場をつくることで、地域の住民から外国人観光客まで、来訪の頻度や滞在時間の長短、老若男女を問わず、多様な人々に親しまれる施設となっています。商業施設としてありふれたガラス張りのシンプルなデザインでなく、「丘」というプリミティブな特異点をつくり出すことで、多くの人を惹き付ける場所性の獲得を狙いました。
この建物には正面がなく、メインエントランスもありません。いろいろな方向から「丘」の中に入り、「丘」の上に登ることができる自由でゆるやかな空間を持った、まちに開かれた建築となっています。また、ハードとしての建築だけでなく、施設に関するほとんどすべての要素が弊社を含むプロジェクトチームの手によってデザインされています。たとえば、この施設のコアでもある事業者が直営する飲食店においては、「お味噌汁食堂そらみそ」と名付け、お味噌汁とおむすびを中心としたメニュー開発を行い、ロゴやサインなどのアートディレクションからスタッフのユニフォームのデザインに至るまで、トータルなデザインが行われました。また、定期的にイベントや勉強会を企画し、ここに集まった人々の出会いや交流から、まちでの活動をより盛んにしていくための先々のアクションが模索されています。
CATEGORIES
LOCATION
石川県金沢市金石西
YEAR
2017
CLIENT
COLLABORATORS
トーンアンドマター,morld,lysning,オーノJAPAN,ymo,岡安泉照明設計事務所
CONTRUCTION